紳士服の聖地として名高いロンドンのサヴィル・ロウは、1846年にヘンリー・プールが32番地にテーラーを開業して以来、多くの著名なテーラーが集まり、その名声を高めてきました。
この通りで仕立てられるビスポーク・スーツは、その卓越した品質とフィット感で世界中の紳士たちに愛されています。
一方、日本では「背広」という言葉がサヴィル・ロウに由来するという説があり、その伝統と影響は日本のファッション文化にも深く根付いています。
この記事では、サヴィル・ロウと背広の関係、そしてサヴィル・ロウがいかにして紳士服の象徴となったのかについてご紹介します。
目次
サヴィル・ロウの歴史
サヴィル・ロウの始まり
サヴィル・ロウは、ロンドンのメイフェア地区に位置し、19世紀中頃から世界的に有名な紳士服の仕立て屋が集まる通りとして知られています。
サヴィル・ロウの歴史は、1846年にヘンリー・プール(Henry Poole)が32番地にテーラーを開業したことから始まりました。
ヘンリー・プールはその卓越した技術と品質で評判を得、他の多くのテーラーがこの通りに店舗を構えるきっかけとなりました。
ビクトリア時代の発展
ヘンリー・プールの成功を受けて、サヴィル・ロウは急速に発展しました。
この通りは、ビクトリア時代の紳士たちにとって特別な存在となり、特にジェントルメンズクラブの会員や貴族階級の間で人気を博しました。
当時のサヴィル・ロウは、イギリスの上流階級が集まる社交の場であり、紳士たちはここでビスポーク・スーツを注文することがステータスシンボルとなっていました。
20世紀初頭の変革
20世紀に入ると、サヴィル・ロウのテーラーたちは新しいデザインや技術を取り入れ始めました。
1969年には、ナッターズ・オブ・サヴィル・ロウ(Nutters of Savile Row)が開店し、ショーウィンドウでスーツを展示するなど、革新的なアプローチを取り入れました。
これにより、サヴィル・ロウは従来の保守的なイメージから一歩進んだモダンなファッションの発信地としての地位を確立しました。
経済的挑戦と再生
1990年代に入ると、サヴィル・ロウは賃料の高騰や経済的なプレッシャーに直面し、多くの伝統的なテーラーが閉店を余儀なくされました。
この時期には、ジョルジオ・アルマーニなどのデザイナーから「時代遅れ」との批判も受けましたが、サヴィル・ロウはその伝統を守り続けました。
2005年には、サヴィル・ロウに拠点を置くテーラーたちが「サヴィル・ロウ・ビスポーク協会」を結成し、通りの存続とその名声を守るための活動を行っています。
サヴィル・ロウの影響と顧客
サヴィル・ロウの顧客には、ウィンストン・チャーチル、ホレーショ・ネルソン、ナポレオン三世、ミック・ジャガー、チャールズ皇太子など、多くの著名人が名を連ねています。
また、ビートルズの最後のコンサートである「ルーフトップ・コンサート」は、サヴィル・ロウにあるアップル・コア社の屋上で行われました。
これにより、サヴィル・ロウは音楽や文化の歴史にも名を刻んでいます。
現在のサヴィル・ロウ
今日のサヴィル・ロウは、その伝統と品質を維持しつつも、現代のニーズに応えるために進化し続けています。
若いデザイナーや新しいブランドが加わることで、サヴィル・ロウは常に革新を追求しつつ、その歴史と伝統を守り続けています。
ビスポーク・スーツの聖地
ビスポークとは何か
ビスポーク(bespoke)とは、顧客の注文に応じて一から仕立てるオーダーメイドの服のことを指します。
既製服とは異なり、ビスポークは顧客の体形、好み、用途に合わせて作られるため、フィット感や着心地が抜群です。
このような特別なスーツを提供する場所として、サヴィル・ロウは世界的に有名です。
サヴィル・ロウのビスポーク・スーツの製作過程
サヴィル・ロウのテーラーたちは、長年の経験と技術を駆使してビスポーク・スーツを作り上げます。
製作過程は以下のようになります。
カウンセリングと採寸
最初のステップは、テーラーと顧客とのカウンセリングです。
この段階で、スーツのデザイン、素材、用途について詳細に話し合います。
その後、テーラーは顧客の体形を正確に測定し、個々の寸法に基づいてパターンを作成します。
パターン作成と仮縫い
採寸に基づいて、紙のパターンを作成し、そのパターンを使って布地をカットします。
次に、仮縫い(basting)を行い、顧客の体に合わせて細部を調整します。
この仮縫いの段階で、フィット感やデザインの微調整を行います。
顧客が満足するまで何度も仮縫いを繰り返すことがあります。
本縫いと仕上げ
仮縫いで完璧なフィットが確認された後、最終的な縫製に入ります。
熟練の職人が一針一針丁寧に縫い上げ、最高品質のスーツを完成させます。
仕上げには数週間から数ヶ月かかることもあり、その分だけ品質とフィット感が保証されます。
サヴィル・ロウの特徴的なビスポーク・スーツ
サヴィル・ロウのビスポーク・スーツは、その品質とデザインで広く認められています。
以下に、いくつかの特徴的なポイントを紹介します。
高品質な素材
サヴィル・ロウのテーラーは、最高品質の布地と材料を使用します。
ウール、カシミア、シルクなど、世界中から厳選された素材が使用され、その触り心地と耐久性は抜群です。
職人技
サヴィル・ロウのテーラーは、何世代にもわたって受け継がれてきた伝統技術を持つ職人たちです。
彼らの手による細やかな縫製技術は、他では味わえない特別な仕上がりを実現します。
個々のスタイル
ビスポーク・スーツは、顧客一人ひとりのスタイルや好みに合わせてデザインされます。
クラシックなスタイルからモダンなデザインまで、幅広いオプションが提供され、世界で一つだけの特別なスーツが完成します。
サヴィル・ロウの現代的な挑戦
サヴィル・ロウは、その伝統を守りながらも、現代のファッションの潮流に対応するために進化を続けています。
若いデザイナーや新しいブランドが加わり、革新と伝統が融合した新しいビスポーク・スーツが生まれています。
こうした努力により、サヴィル・ロウは依然として世界の紳士服の中心地であり続けています。
サヴィル・ロウの名門テーラー
ヘンリー・プール(Henry Poole)
ヘンリー・プールは、1846年にサヴィル・ロウ32番地にテーラーを開業し、サヴィル・ロウの歴史を築いたパイオニアとして知られています。
彼の店は、ビクトリア時代の英国紳士たちにとって欠かせない存在であり、数多くの貴族や著名人が彼のスーツを愛用しました。
ヘンリー・プールは、ディナージャケット(タキシード)の発明者としても知られており、現在でもその伝統と品質を守り続けています。
CHECK
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ヘンリー・プール(Henry Poole & Co)は、1806年に創業されて以来、その卓越した技術と高品質なスーツで世界中の紳士たちに愛されてきました。 特に、構築的なナチュラルショルダーや ...
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ハンツマン(Huntsman)
1849年に設立されたハンツマンは、サヴィル・ロウで最も歴史あるテーラーの一つです。
王侯貴族やハリウッドスターに愛されるこの店は、クラシックでエレガントなスタイルが特徴です。
特に、映画「キングスマン」で店舗が使用されたことから、現代のファッション愛好家にも広く知られるようになりました。ハンツマンのスーツは、その優れたフィット感と仕立ての技術で高く評価されています。
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ギーブス&ホークス(Gieves & Hawkes)
ギーブス&ホークスは、1785年に設立され、サヴィル・ロウ1番地に店舗を構えるテーラーです。
英国王室御用達の認定を受けており、その高い品質とクラフトマンシップで知られています。
ギーブス&ホークスは、軍服の仕立ても行っており、その技術はスーツの仕立てにも生かされています。
顧客にはウィンストン・チャーチルやマイケル・ジャクソンなどが名を連ねています。
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リチャード・ジェームス(Richard James)
1992年に設立されたリチャード・ジェームスは、比較的新しいブランドですが、モダンで洗練されたデザインで注目を集めています。
伝統的なサヴィル・ロウの技術を取り入れつつも、現代的なスタイルを融合させたスーツは、若い世代のビジネスマンやファッション愛好家に人気です。
リチャード・ジェームスは、鮮やかな色使いや斬新なデザインで、サヴィル・ロウに新しい風を吹き込んでいます。
ナッターズ・オブ・サヴィル・ロウ(Nutters of Savile Row)
1969年に創立されたナッターズは、サヴィル・ロウに革新をもたらしたブランドの一つです。
トミー・ナッターによって設立され、彼の斬新なデザインとショーウィンドウでの展示により、従来の保守的なイメージを一新しました。
ビートルズやミック・ジャガーなど、数多くのロックスターがナッターズのスーツを愛用し、その名は一躍有名になりました。
アンダーソン&シェパード(Anderson & Sheppard)
アンダーソン&シェパードは、1906年に設立されたテーラーで、特にソフトテーラーリング技術で知られています。
この技術は、スーツが体に自然にフィットするように仕立てる方法で、従来の硬い仕立てとは一線を画します。
顧客にはチャールズ皇太子やフレッド・アステアなどが名を連ねており、そのエレガントで快適なスーツは多くの人々に愛されています。
サヴィル・ロウには、歴史と伝統を誇る数多くの名門テーラーが集まっており、それぞれが独自の技術とスタイルを持っています。
ヘンリー・プール、ハンツマン、ギーブス&ホークス、リチャード・ジェームス、ナッターズ・オブ・サヴィル・ロウ、アンダーソン&シェパードなど、どのテーラーもサヴィル・ロウの名声を築き上げる一翼を担っています。
これらのテーラーは、紳士服の最高峰として、これからもその伝統と技術を守り続けるでしょう。
サヴィル・ロウの現状と未来
サヴィル・ロウの現在の状況
サヴィル・ロウは、伝統的なビスポーク・テーラーリングの中心地として、その名声を維持し続けています。
しかし、近年は賃料の高騰や経済的なプレッシャーにより、多くの歴史あるテーラーが閉店を余儀なくされました。
この状況に対抗するため、2005年に「サヴィル・ロウ・ビスポーク協会」が設立され、テーラーたちが協力して通りの伝統を守り、存続を図っています。
現代の挑戦と革新
サヴィル・ロウのテーラーたちは、伝統を守りながらも現代のニーズに応えるために様々な革新を取り入れています。
例えば、ナッターズ・オブ・サヴィル・ロウは1969年に革新的なデザインとショーウィンドウでの展示を導入し、保守的なサヴィル・ロウのイメージを刷新しました。
現在も、多くのテーラーがモダンな要素を取り入れ、若い顧客層を引きつけるための努力を続けています。
サヴィル・ロウの未来
サヴィル・ロウの未来は、その伝統を守りつつも新しい挑戦を続けることにかかっています。
若い世代のテーラーや新しいブランドが加わることで、通りは常に進化し続けています。
例えば、リチャード・ジェームスやオズワルド・ボーテングなどの若手デザイナーは、伝統的な技術を現代的なデザインに融合させ、新しいファッションの潮流を作り出しています。
さらに、サヴィル・ロウのテーラーは、持続可能なファッションやエシカルな製品に対する関心が高まる中で、環境に配慮した素材の使用やサステナブルなビジネスモデルの導入にも取り組んでいます。
このような取り組みは、サヴィル・ロウが今後もグローバルなファッションシーンで重要な役割を果たすために不可欠です。
サヴィル・ロウは、その長い歴史と伝統を持ちながらも、現代のファッション業界の変化に対応するために進化し続けています。
テーラーたちは協力してサヴィル・ロウの文化と技術を守り、新しい挑戦を続けることで、未来に向けてその名声をさらに高めていくでしょう。
サヴィル・ロウと背広
背広の語源
「背広」という言葉の語源にはいくつかの説がありますが、その中でも特に有力なのがサヴィル・ロウ(Savile Row)に由来するという説です。
サヴィル・ロウは、ロンドンのメイフェア地区に位置し、高級紳士服のテーラーが集まる通りとして知られています。
この通りの名前が、日本語の「せびろう」や「せびろ」と訛って「背広」になったとされています。
サヴィル・ロウの歴史と背広
サヴィル・ロウは19世紀半ばから紳士服の聖地としての名声を築いてきました。
1846年にヘンリー・プールが32番地にテーラーを開業したことを皮切りに、多くの著名なテーラーがこの通りに店舗を構えるようになりました。
彼らはビスポーク・スーツの製作で高い評価を得ており、その技術と品質が世界中の紳士から愛されています。
サヴィル・ロウの影響
サヴィル・ロウで仕立てられるスーツは、その卓越したフィット感とクラフトマンシップで広く認知されています。
この通りのテーラーたちが作り出すスーツは、単なる衣服ではなく、着る人の個性やステータスを反映する特別なアイテムです。
特に、ウィンストン・チャーチルやナポレオン三世、チャールズ皇太子など、歴史的な人物たちが愛用したことで、その名声はさらに高まりました。
背広と日本
日本では、スーツを指す言葉として「背広」が広く使われています。
この言葉がサヴィル・ロウに由来するという説は、英国紳士服の影響を強く受けた明治時代から昭和初期にかけて、日本のファッション文化に大きな影響を与えました。
サヴィル・ロウの伝統と品質は、日本のビジネスマンやファッション愛好家にとっても憧れの的となっています。
「背広」という言葉は、サヴィル・ロウに由来する有力な説があり、この通りのテーラーたちが作り上げるビスポーク・スーツの伝統と品質は、世界中の紳士から愛されています。
サヴィル・ロウの影響は、日本のファッション文化にも大きく貢献し、「背広」という言葉を通じてその名声が広まっています。
まとめ:紳士服の聖地として伝統を継承するサヴィル・ロウ
サヴィル・ロウは、その長い歴史と卓越したビスポーク・スーツの技術で、紳士服の聖地として世界中に名を轟かせてきました。
この通りに集まるテーラーたちは、顧客一人ひとりに合わせた特別なスーツを提供し、その品質とフィット感で多くの著名人からも支持されています。
また、日本において「背広」という言葉がサヴィル・ロウに由来するという説があるように、その影響は日本のファッション文化にも深く根付いています。
現代においても、サヴィル・ロウのテーラーたちは伝統を守りながらも新しい挑戦を続けており、若い世代のデザイナーたちが革新をもたらしています。
これにより、サヴィル・ロウはその歴史と名声をさらに高め、未来に向けて進化し続けることでしょう。
この記事では、サヴィル・ロウの歴史、ビスポーク・スーツの魅力、そしてその影響と現代の挑戦について詳しくご紹介しました。
サヴィル・ロウの魅力とその伝統を、これからも多くの人々が楽しむことができるでしょう。
PROFILE
- 古着屋「BUYER'S GARMENT」を運営する元メンズアパレルデザイナー。
セレクトショップのECサイト運用担当後、WEBマーケティング業界に従事し、事業部長などのキャリアを経験。
起業後は「サーフ」「アウトドア」「スポーツ」「ストリート」などのアクティブなメンズファッションやライフスタイル情報を発信するIDEALVINCI専属ブロガーとしても活躍。「メンズ古着」「リユースファッション」などの情報も発信。
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