
ふんわりとしたボリューム感と優雅な光沢を持つファーは、冬の装いに華やかさと高級感を添えてくれる存在です。
一方で、動物愛護や環境配慮といった価値観の変化により、リアルファーだけでなくフェイクファーやエコファーといった新たな選択肢にも注目が集まっています。
見た目や手触りだけでなく、素材の背景まで理解することが求められる今、どのファーを選ぶかは、個人のライフスタイルや価値観を反映する重要なポイントとなっています。
この記事では、リアルファー・フェイクファー・エコファーそれぞれの種類と特徴、その違いや選び方のポイントについてご紹介します。
目次
ファー素材の魅力と現代的な視点

ファッション性と防寒性を兼ね備えたファーの魅力
ファー素材は、冬のファッションアイテムとして長年にわたり多くの人々に親しまれてきました。
天然の毛皮が持つ独特の光沢や質感は、着こなしに高級感と優雅さを与えてくれます。
また、空気を含んだ毛並みは優れた保温性を発揮し、寒い季節に頼もしい存在です。
コートやマフラー、バッグの縁取りなど、幅広いアイテムで取り入れられることが多く、機能性とファッション性を両立させる素材として重宝されています。
サステナビリティと動物福祉への意識の高まり
一方で、近年では動物愛護や環境保護の観点から、リアルファーの使用を見直す動きが加速しています。
欧米を中心に、多くのラグジュアリーブランドがリアルファーの廃止を発表し、日本国内でもエシカルファッションへの関心が高まっています。
このような背景から、動物の毛皮を使用しない「フェイクファー」や、リサイクル素材を用いた「エコファー」が新たな選択肢として注目を集めています。
ファーの大きな分類:リアルファーとフェイクファーの違い

リアルファーとは?|天然素材ならではの上質な風合いと保温力
リアルファーとは、ミンクやフォックス、ラビットなどの動物から採取された天然の毛皮素材を指します。
最大の特徴は、自然由来ならではのしっとりとした質感と、極めて高い保温性にあります。
毛の密度や光沢感も個体ごとに異なり、一点ものとしての価値も魅力のひとつです。
また、見た目の美しさと耐久性から、ハイブランドのアウターや小物に多く使用されてきました。
しかし近年では、動物愛護団体の活動や消費者の倫理的意識の高まりを受け、リアルファーの使用に対する社会的な批判も強まっています。
世界的なラグジュアリーブランドの中には、リアルファーの完全廃止を宣言する動きも見られるようになりました。
フェイクファーとは?|人工素材による再現性と進化
フェイクファーは、アクリルやポリエステルなどの合成繊維で作られた人工毛皮です。
見た目や触感をリアルファーに似せて作られており、近年の技術進化により、その再現度は年々向上しています。
特に高品質なフェイクファーは、パッと見ただけではリアルファーと判別がつかないほど精巧であり、ファッション用途として十分に満足できる仕上がりとなっています。
フェイクファーの大きな利点は、動物を犠牲にしない倫理的な選択肢である点と、価格帯の広さにあります。
トレンドアイテムとしての使いやすさや、メンテナンスのしやすさも人気の理由です。
ただし、素材によっては静電気が発生しやすい、経年劣化しやすいなどの弱点もあるため、用途や品質の見極めが重要になります。
エコファーとは?|サステナブルな未来に向けた新たな選択肢
エコファーは、フェイクファーの一種でありながら、より環境に配慮した素材を用いた毛皮です。
代表的な例として、リサイクルポリエステルや植物由来のバイオ素材を使ったエコファーが挙げられます。
フェイクファーと同様に動物を使用せず、さらに生産工程においてもCO2排出削減や水資源の節約などを意識した作りとなっている点が特徴です。
近年では、エコファーを採用するブランドも増えており、サステナブルファッションの潮流において欠かせない素材となりつつあります。
見た目の美しさだけでなく、環境への配慮という新たな価値観を重視する層から高い支持を得ており、今後さらに普及が進むと予想されます。
代表的なリアルファーの種類と特徴

ミンク(Mink)|艶やかな光沢と上品な高級感
ミンクファーは、リアルファーの中でも特に高級素材として知られています。
毛質は非常に細かく、しっとりとした柔らかさと艶やかな光沢が特徴です。
手触りがなめらかで、ドレープ性にも優れており、コートやショールなどのフォーマルアイテムによく用いられます。
また、カラーバリエーションも豊富で、ナチュラルなブラウンから染色された鮮やかなカラーまで幅広く楽しめます。
フォックス(Fox)|華やかなボリュームと存在感
フォックスファーは、長く豊かな毛並みと、ふんわりとしたボリューム感が魅力のファーです。
特に首回りや袖口など、部分使いでアクセントとして活用されることが多く、ゴージャスな印象を与えます。
シルバーフォックス、ブルーフォックス、レッドフォックスなど、種類によって毛色や質感に違いがあり、それぞれに個性があります。
見た目の華やかさを求める方にぴったりの素材です。
ラビット(Rabbit)|軽くて柔らか、コストパフォーマンスの良さが魅力
ラビットファーは、非常に軽量で柔らかく、リアルファーの中では比較的手頃な価格帯で入手できる素材です。
ファッションアイテムとして気軽に取り入れやすく、コート全体に使われることも多いファーです。
ただし、耐久性にはやや劣るため、長期間使用する場合は定期的なメンテナンスが必要です。カジュアルからフェミニンまで、幅広いスタイルにマッチします。
ラクーン(Raccoon)|野性味あふれる強めの毛並み
ラクーンファーは、タヌキやアライグマに由来するワイルドな印象のある毛皮です。
一本一本が太く、長めの毛足が特徴で、ボリューム感のある仕上がりになります。
特に、フードの縁やファー付きフライトジャケットに使われることが多く、アウトドア系やミリタリーテイストのファッションと相性抜群です。
耐久性にも優れ、実用性とデザイン性を兼ね備えたファーといえます。
セーブル(Sable)|究極のラグジュアリーを象徴する最高級ファー
セーブルファーは、リアルファーの中でも最も高級とされる希少素材です。
シベリアンセーブルなどが有名で、その柔らかさ、しっとりとした毛並み、深みのある自然な色合いは唯一無二の存在感を放ちます。
軽くて温かいだけでなく、見た目にも非常にエレガントで、クラシックな毛皮コートやストールに用いられることが多いです。
圧倒的な品格と希少性ゆえに、投資価値を持つファーとしても知られています。
代表的なフェイクファー・エコファーの種類と特徴

アクリルファー|ふんわりとした毛足で存在感を演出
アクリルファーは、合成繊維の中でも最も一般的に使われるフェイクファー素材のひとつです。
長めの毛足が特徴で、ふわっとしたボリューム感を出しやすく、見た目にも暖かみがあります。
視覚的なインパクトが強いため、アウターの襟やバッグの装飾など、スタイルのアクセントとして多用されます。
また、比較的軽量で発色も良いため、鮮やかなカラーバリエーションが楽しめる点も人気の理由です。
ポリエステルファー|短毛で扱いやすく、日常使いに最適
ポリエステルファーは、アクリルに比べて毛足が短く、滑らかな質感が特徴です。
触るとサラリとした手触りで、製品の形状に馴染みやすく、コートやストールなどでよく使われています。
加工性に優れているため、複雑なパターンや繊細なデザインにも対応でき、日常的に取り入れやすい素材です。
また、耐久性にも優れており、自宅での手入れがしやすい点も実用性の高さにつながっています。
リサイクル素材のファー|サステナブルな未来を支える新素材
近年注目されているのが、ペットボトルなどの再生素材から作られたリサイクルポリエステルファーです。
これは「エコファー」とも呼ばれ、環境負荷を抑えた製造プロセスで生産されており、サステナブルブランドを中心に採用が広がっています。
見た目や手触りの再現度も高く、リアルファーの代替素材としても遜色ありません。
ファッション性と環境意識の両立を図る人々から、強く支持されている素材です。
ファー製品を選ぶ際のチェックポイント

毛足の長さ・密度・ツヤの有無を確認する
ファー製品を選ぶ際には、まず毛足の長さや密度、光沢感といった「見た目の質感」をチェックすることが大切です。
毛足が長いほどゴージャスでボリュームのある印象になりますが、その分スタイリングのバランスも求められます。
密度が高いファーは防寒性が高く、高級感も増します。
また、ツヤの有無によって印象が大きく変わるため、シーンや好みに応じて選び分けることがポイントです。
質感と肌触りの違いを把握する
リアルファーとフェイクファーでは、質感に明確な違いがあります。
リアルファーはしっとりとした柔らかさがあり、自然な温かみを感じるのが特徴です。
一方、フェイクファーはサラッとした手触りで軽さがあり、製品によってはやや人工的な質感になることもあります。
実際に触れてみることで、自分が心地よいと感じる素材を選ぶのが失敗しないコツです。
使用シーンに応じた素材とデザインを選ぶ
ファー製品は、使用するシーンによって適したアイテムや素材が異なります。
たとえば、アウターにはボリュームのあるフォックスやラクーンファーが華やかで適していますが、バッグやシューズなどには短毛のフェイクファーの方が使いやすく耐久性にも優れています。
ストールなど肌に直接触れるアイテムには、柔らかなミンクやラビットが好まれます。
使用目的を明確にすることで、見た目だけでなく実用性も考慮した選択が可能になります。
倫理的配慮と環境意識を持つ選択を
近年、ファッションにおける倫理的配慮や環境意識が重視されるようになり、「エシカルファッション」という価値観が広がっています。
動物愛護の立場からリアルファーを避ける人も増えており、フェイクファーやエコファーの選択がスタンダードになりつつあります。
ブランドの製造背景や素材の由来を確認することで、自分の価値観に合ったアイテムを選ぶことができます。
見た目だけでなく「どう作られたか」に目を向ける姿勢が、これからのファッション選びには欠かせません。
ファーを扱う人気ブランド・注目アイテム紹介

高級ブランドに見るファーの伝統と変化
ラグジュアリーファッションの世界では、ファーは長らく上質さや富の象徴として扱われてきました。
中でもFENDI(フェンディ)は、リアルファーを用いた精緻なコートやバッグで知られ、長年ファーの代名詞的存在として君臨してきました。
MAX MARA(マックスマーラ)もまた、洗練されたシルエットと上質なファー使いで、大人の女性から高い支持を集めています。
一方で、GUCCI(グッチ)は2018年にリアルファーの使用を廃止し、フェイクファーや他の代替素材への移行を進めるなど、時代に応じた姿勢を明確にしています。
こうした動きは、ハイブランドの影響力を通じてファッション業界全体に大きな影響を与えています。
国内ブランドによるトレンド感あるファーの提案
日本国内でも、ファーを取り入れた洗練されたデザインを展開するブランドが増えています。
SNIDEL(スナイデル)やFRAY I.D(フレイアイディー)は、女性らしい柔らかさとトレンドを融合させたフェイクファーのアウターやアクセサリーが人気です。
UNITED TOKYO(ユナイテッドトウキョウ)やWILLSELECTION(ウィルセレクション)も、洗練されたシルエットと質の高いフェイクファー素材を用いたコレクションを打ち出し、現代的な感性を持つ層に支持されています。
こうしたブランドは、リアルファーに頼らずとも華やかさや防寒性を実現できることを示し、トレンドと価値観の両立を図る新しいスタイルを提案しています。
エコ・サステナブル視点のブランドに注目
環境や倫理に配慮したエシカルファッションの広がりとともに、サステナブル素材のファーを採用するブランドも注目されています。
STELLA McCARTNEY(ステラ・マッカートニー)は、創業以来一貫してリアルファーを使用せず、エコファーや動物由来原料を使わない革新的な素材を追求してきました。
彼女の姿勢は、ファッション界におけるエシカルの象徴ともいえる存在です。
また、アウトドアブランドであるPatagonia(パタゴニア)も、リサイクル素材を活用したエコファーや、室内インテリアアイテムなどでの応用に取り組んでおり、サステナビリティを軸に新しい価値を創出しています。
見た目の美しさだけでなく、社会や環境に配慮した製品を選ぶことが、これからのスタンダードとなりつつあります。
ファーにまつわる近年のトレンドと社会的背景

世界的なリアルファー廃止の動きとファッション業界の変革
近年、ファッション業界ではリアルファーの使用に対する反発が強まり、多くの有名ブランドがその使用を廃止する流れを加速させています。
特に、LVMHグループ傘下の一部ブランドやGUCCI、BURBERRY、VERSACEなどが、リアルファーの使用停止を宣言し、代替素材へと移行しています。
こうした動きは単なるトレンドではなく、消費者の価値観の変化に応える形で生まれた企業の責任ある姿勢の表れです。
リアルファーに頼らずとも魅力的なデザインを提案する姿勢は、ファッションのあり方そのものを再定義しつつあります。
ヴィーガンファッションの広がりとフェイクファーの進化
動物由来素材を一切使用しない「ヴィーガンファッション」は、単なる一部の思想にとどまらず、環境意識や倫理的選択の象徴として広がりを見せています。
特にフェイクファーは、その中心的な素材として注目されており、近年の技術革新によってリアルファーに限りなく近い風合いや質感が実現されています。
質の高いフェイクファーは、かつての“安っぽい代替品”というイメージを払拭し、デザイナーズブランドや高感度なセレクトショップでも積極的に採用されるようになっています。
環境意識の高まりとリサイクル素材の採用増加
地球温暖化や資源の枯渇といった環境問題への関心が高まる中、ファッション業界でも持続可能な素材選びが重視されるようになりました。
その流れの中で登場したのが、ペットボトルなどの廃材を原料とするリサイクルポリエステル製のエコファーです。
従来のフェイクファーと比べて環境負荷を抑えられる点が評価され、多くのサステナブルブランドが採用を進めています。
単に“動物を使わない”というだけでなく、“環境にも配慮された選択”ができる素材として、今後さらに普及していくことが期待されています。
まとめ:ファーは素材の理解と時代性のバランスが鍵

ファー素材は、見た目の華やかさや防寒性といった機能面に加え、使われる素材の背景や価値観までもが問われる時代に入っています。
リアルファー、フェイクファー、エコファーといった多様な選択肢の中から、素材ごとの特性を正しく理解したうえで、自分のスタイルや思想に合った製品を選ぶことが、これからのファッションには欠かせません。
高級感や肌触りを重視するならリアルファーという選択もありますが、動物福祉や環境配慮を重んじるならフェイクファーやエコファーが有力な選択肢となります。
近年では、どの素材を選ぶかが“自分らしさ”や“時代性”を表すメッセージとなる場面も増えており、単なるファッション性だけでは語れない深みが加わっています。
ファーを身にまとうことが自分自身の価値観やライフスタイルを映し出す時代だからこそ、素材の背景に目を向け、持続可能で納得のいく選択を心がけることが、これからのファッションにおけるスタンダードとなるでしょう。
PROFILE
- メンズファッション専門WEBライター
- 古着屋「GARATOIRO」「BUYER'S GARMENT」を運営する元メンズアパレルデザイナー。
セレクトショップのECサイト運用担当後、WEBマーケティング業界に従事し、事業部長などのキャリアを経験。
起業後は30万人以上のファッションユーザーに利用されるWEBメディア「IDEALVINCI」専属ブロガーとしても活躍。「メンズ古着」「リユースファッション」などの情報も発信。
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