
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)は、日本のファッションシーンにおいて「モード」と「ストリート」の境界を軽やかに横断してきたブランドです。
2012年の設立以来、日常に溶け込むベーシックさと、緻密に計算されたミニマルデザインで高い評価を受けてきました。
デザイナーの感性が生む洗練されたカッティング、上質な素材選び、そしてアイウェアラインにまで広がる独自の美学は、まさに“現代の紳士像”を再定義するものです。
この記事では、MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)のブランドの起源や歴史、創業者・デザイナーの背景、デザインの特徴とスタイルについてご紹介します。
目次
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)の起源と歴史
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)の起源と歩み
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)は、2012年春夏(2012SS)コレクションをもって正式にスタートした日本発のメンズブランドです。
創設にはふたりの人物が携わっています。
ひとりは、かつてストリート・モード系ブランド「PHENOMENON(フェノメノン)」のデザイナーを務めたオオスミタケシ氏、もうひとりはセレクトショップ運営者として名を馳せた吉井雄一氏です。
オオスミ氏はPHENOMENONを立ち上げた後、ブランドの方向性の違いを理由に退任し、新たな表現を模索していました。
一方の吉井氏は、セレクトショップ「THE CONTEMPORARY FIX(ザ・コンテンポラリーフィックス)」を主宰しており、ファッションとセレクトの視点からブランド創設に参画しています。
立ち上げ時には、「日常のベーシックスタイル」を基軸に、ミニマルな表現と洗練されたカラー使いを前面に打ち出すというコンセプトが掲げられました。
2013年には東京ファッションウィーク(TOKYO FASHION WEEK)でランウェイデビューを果たし、ブランドの認知度を大きく高めています。
ブランド名変更と理念の変遷
ブランドは長らく「MISTER GENTLEMAN(ミスター ジェントルマン)」として親しまれてきましたが、2022年4月にはブランド名を「SOFTHYPHEN(ソフトハイフン)」へ変更することが発表されました。
この変更は、社会的な価値観の変化を背景にしたものです。
吉井氏は「MR.という表現が性別を限定する印象を与えるため、現代的価値観にそぐわない」との見解を示しており、より柔軟かつ包括的なブランドへの転換が意図されています。
とはいえ、「MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)」というブランド名やその持つアイデンティティは、現在でも一部のコレクションやファンの間で根強く支持されています。
アイウェア展開と“憧れを生み出すもの”という理念
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)は、アパレル分野にとどまらず、アイウェア領域でも存在感を発揮しています。
とくに「Mr.Gentleman EYEWEAR(ミスタージェントルマン アイウェア)」は、ブランドのもう一つの顔として認知されています。
このアイウェアラインは、広島県のオプティカルストア「SENSE」のオーナーである高根俊之氏がデザインを担当しているとされます。
ラインの根底には、「憧れを生み出すもの(things that produce admiration)」という理念が据えられており、ミュージシャンや俳優、映画作品などからのインスピレーションが各モデルに込められています。
製造には「メイド・イン・ジャパン」に強いこだわりを持ち、福井県鯖江市の高度な技術を活用して、細部まで緻密に仕上げられたフレームが特徴です。
アセテート素材の選定、磨きや仕上げに至るまで一切妥協がありません。
代表モデルには「JIMMY」「DOUGLAS」「PATRICK」「DYLAN」などがあり、クラシックなフォルムと現代的ディテールを融合したデザインが魅力です。
また、アーティストの岡村靖幸氏が「DYLAN Col‑A」を着用していることでも知られており、俳優の渡部篤郎氏、岡田准一氏、瀬戸康史氏なども愛用している例が報じられています。
歴史の転換点と現在の潮流
ブランドの歴史を振り返ると、いくつかの転換点が明確に浮かび上がります。
設立初期には、ストリートとモードの融合という新たな価値を提案し、ミニマルな表現と色彩の妙で高い評価を受けました。
その後は、アイウェアという新領域にも進出し、ファッションブランドとしてのスケールと深みを増していきます。
特に、顔まわりという視認性の高い領域で世界観を発信するアイウェア展開は、ブランドの新たなシグネチャーとなりました。
そして2022年、ブランド名をSOFTHYPHEN(ソフトハイフン)へ変更するという決断は、時代の変化に応じた柔軟な姿勢を示すものでした。
性別を問わない表現、多様性への配慮がますます求められる中、ブランドはその在り方をアップデートしています。
それでもなお、「MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)」の名称と精神は、多くのファンにとって今も特別な意味を持ち続けています。
ブランドの精神を今に受け継ぐ
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)は、オオスミタケシ氏と吉井雄一氏という異なる個性の融合から誕生し、ベーシックと洗練の調和を追求してきたブランドです。
ファッションとアイウェアの両面から“憧れを生み出す”スタイルを打ち出し、日本のみならず国際的にも注目される存在となりました。
SOFTHYPHEN(ソフトハイフン)へと進化した現在も、そのデザイン思想と価値観は継承されています。
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)のこれまでの歩みと哲学は、今後のファッションのあり方においても重要な示唆を与えてくれる存在であり続けます。
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)創業者について
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)を創った人々
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)は、単なるブランド名以上に「思想」と「感性の融合」の場として立ち上げられました。
その創業者たちの背景や歩み、役割を丁寧に見つめることで、ブランドの本質がより明確に浮かび上がってきます。
オオスミタケシ ― クリエイターとしての多面性とブランド形成への軌跡
オオスミタケシ氏は、1974年に静岡県で生まれ、音楽・ファッション・カルチャーの領域を自在に横断する表現者として知られています。
1996年には、ヒップホップユニット「SHAKKAZOMBIE(シャカゾンビ)」のメンバー、Big‑Oとしてメジャーデビューを果たし、音楽活動で培った感性をファッションにも投影してきました。
1999年には井口秀浩氏と共にストリートウェアブランド「SWAGGER(スワッガー)」を立ち上げ、さらに2004年にはよりモード寄りの「PHENOMENON(フェノメノン)」をスタート。
2010年には東京ファッションウィークでのコレクション発表を果たし、ブランドの評価を一層高めました。
PHENOMENONからの離脱後、オオスミ氏は2012年に吉井雄一氏とともにMR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)を設立しました。
モダンで洗練された日常着の提案を軸に、ブランドのクリエイティブ面を牽引していきました。
しかし、2021年1月24日に敗血症のため47歳で逝去されました。
彼の死後も、MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)におけるその功績と影響力は、今なお深く語り継がれています。
吉井雄一 ― セレクトショップオーナーからブランドの柱へ
吉井雄一氏は、MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)のもう一人の創業者であり、ブランド運営と店舗経営の両面に通じる人物です。
彼は南青山にてヴィンテージショップ「In The Policy of Truth(イン・ザ・ ポリシー・オブ・トゥルース)」や、レストラン兼ショップ「PARIYA(パリヤ)」を運営してきました。
また、ルイ・ヴィトン社内で展開されたセレクトショップ「CELUX(セリュックス)」でのバイヤー経験も有しています。
2012年にはオオスミタケシ氏とタッグを組み、MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)を設立しました。
オオスミ氏がデザインを担う一方で、吉井氏はショップ運営や商品企画、ブランド戦略を担当し、ファッションのビジネス面からブランドを支えてきました。
2021年にオオスミ氏が他界した後、ブランドの継続に悩みながらも、最終的にはブランドを引き継ぐ決断をし、2022年にはブランド名を「SOFTHYPHEN(ソフトハイフン)」に変更して新たなフェーズへと移行しました。
創業者二人の協働と相互補完性
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)は、オオスミタケシ氏の革新的なデザインアプローチと、吉井雄一氏のマーケティングおよび経営の手腕が融合することで誕生しました。
オオスミ氏は音楽やカルチャーを背景に、モードとストリートを横断する表現でブランドに個性を与え、吉井氏は市場の分析力と実務力でブランドを商業的に成功へと導きました。
この両者の補完関係は、ファッションブランドにおいて稀有なバランスをもたらし、MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)という唯一無二の世界観を築き上げました。
オオスミ氏の死後も、その精神は吉井氏に受け継がれ、ブランドは新たな名称のもとで進化を続けています。
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)のデザインの特徴とスタイル
デザインの核にある思想:ミニマル × ベーシック
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)のデザインにおいて特に際立つのは、「日常で好まれるベーシックスタイル」を基盤としながら、そこに洗練性を加えていくという姿勢です。
ブランド初期には、「ミニマルなデザインと美しいカラーリング」を打ち出すことがコンセプトとして掲げられていました。
この考え方は、過度な装飾を排し、ラインやシルエット、色彩の組み合わせで差異を生み出すという方向に貫かれています。
ジャケットやシャツ、パンツ、カットソーなど、あくまで日常に寄り添うアイテムに独自の個性を宿らせる点が特徴です。
ブランド名がSOFTHYPHEN(ソフトハイフン)へと変更された後も、ミニマルさとベーシックさは変わらずデザインの核として残り、さらにユニセックス展開や多様なサイズレンジへの対応という柔軟性も加わっています。
アイウェアにおける表現:構造とディテールの融合
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)のもうひとつの重要な表現領域が、「Mr.Gentleman EYEWEAR(ミスタージェントルマン アイウェア)」です。
ここではアパレルとは異なる素材や構造を活用しながら、ブランドの美学が具現化されています。
このアイウェアでは、「デザイン × 質感 × クオリティ」のバランスを重視しており、特に福井県鯖江市の工場によって製造される精密な仕上がりが、日本製の強みとして際立っています。
ツインブリッジ構造や、曲線と直線が交錯するフレーム、ブローからテンプルにかけて滑らかに繋がるラインなど、細部へのこだわりが随所に見られます。
代表モデル「PIER(ピア)」では、ボストン型の丸みにモダンなエッジを加えることで、快適な装用感と個性を両立させています。
アセテート素材に金属芯やクリングス鼻パッドを組み合わせることで、美しさと実用性の両面を兼ね備えています。
また、縄手テンプルや富士山をモチーフとしたオリジナルブリッジなど、クラシックな要素を盛り込みつつ、機能性と新しさを追求する姿勢もMR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)らしい特徴です。
スタイルとしての佇まい:モダン × クラシック × カルチャー
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)のスタイルは、ミニマルでモダンなだけでなく、クラシックなディテールやカルチャーへの深い視点も組み込まれている点が特徴です。
アイウェアモデル「LEO(レオ)」や「LOUISE(ルイーズ)」では、フレンチヴィンテージにインスパイアされたデザインが採用されており、上品さと現代性を併せ持った佇まいを実現しています。
「JBD」ではアメリカンヴィンテージの雰囲気を感じさせる重厚なフォルムが採用されており、知的で存在感のある印象を与えます。
ファッションにおいても、モノトーンやアースカラーを基調としたコーディネートが多く、主張しすぎず、洗練された印象を与える日常着として高い評価を受けています。
スタイルは実用性と美意識を両立させ、着る人に自然体で品格をもたらします。
デザインが示すブランドらしさ
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)のデザインは、ファッションとアイウェアの両面において「引き算の美学」と「バランスの追求」に貫かれています。
ベーシックでありながら洗練された佇まい、構造美と機能性の調和、そしてカルチャーへの深い敬意が、その魅力の核を成しています。
ブランド名がSOFTHYPHEN(ソフトハイフン)へと変わった現在も、そのスタイルや哲学はしっかりと受け継がれており、時代とともに進化を続けながらもMR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)らしさを失っていません。
これからもファッションとライフスタイルの交差点における美意識の表現者として、注目を集めていくことでしょう。
まとめ:MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン) ブランドリリース
MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)は、オオスミタケシと吉井雄一という異なる才能の融合から生まれ、ベーシックかつ洗練されたデザイン哲学を軸に進化を遂げてきたブランドです。
ファッションアイテムにおいてはミニマルな美意識を貫きながら、現代的なカラーやシルエットで洗練を加え、アイウェアラインでは構造美と機能性を兼ね備えたフレームデザインで存在感を示しています。
ブランド名がSOFTHYPHEN(ソフトハイフン)へと変わった現在も、その根幹にある「日常に寄り添いながらも特別感を宿す」スタイルは変わることなく継承されています。
カルチャーへの深いリスペクトと時代性への鋭敏な感覚を融合させながら、MR.GENTLEMAN(ミスタージェントルマン)は今後も唯一無二のスタイルを提案し続けていくでしょう。
PROFILE
- メンズファッション専門WEBライター
- 古着屋「GARATOIRO」「BUYER'S GARMENT」を運営する元メンズアパレルデザイナー。
セレクトショップのECサイト運用担当後、WEBマーケティング業界に従事し、事業部長などのキャリアを経験。
起業後は30万人以上のファッションユーザーに利用されるWEBメディア「IDEALVINCI」専属ブロガーとしても活躍。「メンズ古着」「リユースファッション」などの情報も発信。
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