
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)は、フランスを代表するデニムブランドとして、1970年代から現在に至るまで、数々の革新的なファッションを提案してきました。
ストーンウォッシュ加工の先駆者として知られるだけでなく、人体工学に基づいた立体裁断、レーザーや超音波による加工技術、ストリートとモードを横断するデザイン性など、その魅力は多岐にわたります。
また、韓国や日本などアジア市場での再評価も進み、Z世代からも注目を集めているブランドです。
この記事では、そんなMARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)のブランドの起源や歴史、創業者・デザイナーの背景、デザインの特徴とスタイルについてご紹介します。
目次
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の起源と歴史
ファッション史に刻まれた名「MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)」
フランス発のファッションブランド、MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)は、ジーンズという日常衣服の領域に革新をもたらし、テクノロジーと美学を融合させた実験的なアプローチで知られる存在です。
ここからは、MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の起源と歴史についてご紹介していきます。
創業の背景と出会い:マリテ・バシェレリーとフランソワ・ジルボー
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の物語は、まず2人のデザイナー、マリテ・バシェレリー(Marithé Bachellerie)とフランソワ・ジルボー(François Girbaud)の出会いから始まります。
フランソワはテキスタイルとの関わりを持つ家系に育ち、マリテはファッション表現への関心を抱いていました。
二人は1960年代初頭にパリ近郊で出会い、互いの思索と技術が重なり合う関係を築いていきます。
当初、ジーンズはアメリカのワークウェア文化に根ざした服でした。
しかし二人はそこに「ヨーロピアンな美意識」と「素材・加工への探究心」を持ち込み、ジーンズを進化させることを志したのです。
“ストーンウォッシュ”の創出とブランド初期の展開
1960年代後半、マリテとフランソワは、粗い石(軽石/ストーン)を使ってジーンズを摩擦し、あえて色落ち感を持たせる加工法、「ストーンウォッシュ(stone wash)」を研究・工業化します。
この技術は、それまで新品のジーンズには無かったヴィンテージ風の風合いを与えるもので、二人の名声を一気に高めました。
1968年、彼らはブランド名「ÇA」として最初のコレクションを発表。
ストーンウォッシュを応用したジーンズは、単なるアメリカンジーンズとは一線を画すスタイルとして評価されます。
1972年には、パリのレ・アール地区にある Halles Capone(アル・カポネ)地区に第1号店を開設し、本格的に自社ラインを発表します。
これが、後のMARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)としての本格的なブランド展開の礎となりました。
ブランド名自体が確立するのは1980年代以降であり、ジーンズを中心としながらも、テクノロジーを駆使した加工やファッション性の高い解釈を重視する姿勢が徐々に明らかになっていきます。
拡大と革新:1980〜1990年代
1980年代および1990年代は、MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の全盛期ともいえる時期です。
この間、ブランドはただジーンズを売るだけでなく、「ジーンズという素材をキャンバスとする実験的なファッション表現者」としての地位を確立していきました。
たとえば、1980年代にはストーンウォッシュ加工の深化と並行して、レーヨンとデニムを混紡した「キュプロデニム」など異素材の融合にも取り組みました。
さらに、1990年代後半には「Be Bleu Éternel」という発色を保持する技術を発表し、ジーンズの色落ちを抑える新手法を導入。
この技術により、インディゴブルーを長く保つことが可能になりました。
また、1990年代に入るとヒップホップおよびストリートファッションとの交わりが強まり、アメリカ市場においても存在感を放ち始めます。
たとえば、映画『フラッシュダンス(Flashdance)』でジルボーのジーンズが登場するなど、文化的影響力も拡大しました。
困難の時期と再構築:2000年代~2010年代
2000年代後半から、MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)は、経営面での苦境に直面します。
2008年の世界金融危機の影響もあり、売上やブランド価値の維持は厳しくなりました。
2012年には、フランス企業として債務整理や法的整理の動きが報じられ、実質的な経営危機が明らかになります。
そして2013年11月、パリの直営店やリヨン、ベルギーの店舗などが業務清算により閉鎖され、ブランドは一時的に “消滅” の危機に陥ります。
日本国内でも、販売代理店とのライセンス契約終了が発表され、国内展開がほぼ停止しました。
しかし、創業者夫妻は諦めず、2015年には「Mad Lane(マド・レーン)」という新たな企業形態を立ち上げ、従来型の店舗展開に頼らない「移動型販売」やポップアップ形式での発表を中心に活動を再開します。
再進出と日本での復活:2020年代の動き
近年、MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)は日本市場への再進出を果たしつつあります。
2025年2月には、株式会社yutoriが伊藤忠商事経由で日本市場における販売特約店契約を締結し、同年2月12日には日本公式オンラインストアがローンチされました。
この再参入は、韓国市場での人気の高まりを背景にしています。
韓国では近年、MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)がストリート系/カジュアル系ファッションの潮流のひとつとして支持を受け、若年層の間で再び注目を集めています。
ブランド側も、この動きを捉えて日本向け限定アイテムや特典展開、最新コレクションの投入を積極的に行う構えです。
日本での物理店舗の復活も視野に入れており、今後の展開が期待されます。
技術と美学の融合:ブランドを支えた思想とアプローチ
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)が長くファッション界で語り継がれてきた背景には、「技術革新」と「美的探求」のバランスがあります。
まず特筆すべきは、ストーンウォッシュをはじめとした染色・加工技術の先駆性です。
洗い加工の工業化によって「新品でありながらヴィンテージ風」を実現した技術は、他ブランドとの差別化をもたらしました。
さらに、1990年代以降はレーザー加工や超音波加工、さらには「Wattwash(ワットウォッシュ)」と呼ばれる、ほとんど水を使わずにデニムの表面を削る技術を導入。
環境配慮の観点からも注目を浴びました。
一方で、デザイン面でも「バギージーンズ」「エンジニアードジーンズ」「メタモルフォジーンズ」といった、構造的・思考的アプローチのモデルを次々と打ち出すことで、単なる流行追随ではない独自の世界観を確立していきます。
ブランドの歴史から紐解く未来への視座
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の歴史は、ジーンズという普遍的な衣服を舞台に、「技術 × 美学 × カルチャー」を体現してきた軌跡でもあります。
創業からストーンウォッシュの発明、急成長と挫折、そして再興へと至るプロセスは、ブランドの挑戦と再生の物語として、多くのファッション関係者や愛好家に語り継がれています。
創業者:マリテ・バシェレリーとフランソワ・ジルボーの出会いと志向
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の根幹には、創業者であるマリテ・バシェレリー(Marithé Bachellerie)とフランソワ・ジルボー(François Girbaud)の人物像とその共鳴があります。
まず、マリテ・バシェレリーは1942年にリヨン近郊で生まれ、手工芸的な布や衣服づくりに親しんだ家庭環境を有していました。
一方、フランソワ・ジルボーは1945年にタルヌ県マザメ出身で、テキスタイル産業にゆかりある土地で育ち、素材や染色技術に対する感覚を磨いてきた人物です。
ふたりが出会ったのは1960年代のパリまたはその周辺とされ、マリテは手づくりのポンチョやファッション表現を試み、フランソワもジーンズ輸入や素材技術の研究を手がけていたといわれます。
ともに“単なる衣服”を超えた表現を模索していた彼らは、やがてペアを組み、ジーンズという素材を軸にした革新的なアプローチを追求するようになります。
ブランド設立に至るプロセスと初期活動
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の公式な設立年は1972年であり、ふたりが共同でファッション事業をブランド化した年とされています。
ただし、それ以前より「ÇA」など別の名義でデニム加工などを試行していた歴史もあります。
創業初期には、洗濯場でジーンズを石とともに回して色落とす実験を重ね、ストーンウォッシュ技術を工業化する試みがなされました。
ブランド設立当初、彼らはアメリカ風のジーンズに対して、ヨーロッパ的な感性と実験性を持ち込みたいという考えを共有しており、これがMARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の大きな特徴となっていきます。
また、パリの起業家たちや支援者からのバックアップも受けながら、ブランドの輪郭を整えていきました。
技術革新と事業展開:ふたりの役割と相互補完
マリテとフランソワにはそれぞれ明確な得意分野があり、マリテは布の造形や手仕事的な視点からのデザインを、フランソワは素材や染色・洗い加工など技術面の設計と工業化を担当するという役割分担がなされていました。
この相互補完的な関係が、ストーンウォッシュやレーザー加工、超音波洗浄、Wattwash(ワットウォッシュ)といった革新技術の導入にも繋がっていきました。
さらに、ふたりは本ブランド以外にも、Matricule 11342、Compagnie des montagnes et des forêts、Closed、Compléments、Maillaparty などの副次的プロジェクトやブランド名義でも展開を進めてきました。
これにより、コアであるデニムを軸にしながらも、実験的かつ芸術的な方向性を保つことに成功したのです。
倫理的問題と創業者家族の関与
創業者夫妻の子息であるオリヴィエ・バシェレリー(Olivier Bachellerie)が社長を務めていた時期に、労働差別や雇用契約に関する訴訟が発生し、裁判所から賠償命令を受けたケースも存在します。
この問題は、ブランド運営におけるガバナンスや経営倫理に対して疑問を投げかける出来事として注目されました。
また、2005年にはキリストの「最後の晩餐」をモチーフにした広告「La Cène」により、宗教的表現への批判が殺到。
裁判沙汰となり、最終的にフランス最高裁は広告の表現の自由を支持し、訴えを退けました。
こうした事例からも、創業者たちは表現の自由を主張しながらも、常に社会的・宗教的なリスクとも向き合っていたことがうかがえます。
創業者による再構築と現在への道筋
2015年、MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)の破産・縮小後、マリテとフランソワは新たに「Mad Lane(マド・レーン)」という形式で再起を図ります。
これは従来の店舗販売から脱却し、ポップアップ形式や移動型展示を活用する新たなビジネスモデルでした。
この再構築においても、創業者自身が主導している点が特筆されます。
現在もMARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)のブランド名には彼らの名が残されており、その思想と実験精神は現行のブランド展開に受け継がれています。
技術革新と表現の自由を基軸としたふたりの思想は、今後もブランドの根幹を支え続けるでしょう。
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)のデザインの特徴とスタイル
デザイン哲学:実用性と実験性の融合
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)のデザインは、「ジーンズという日常衣服を再定義する」という意志のもとで展開されています。
立体裁断をいち早く導入し、着用時のストレスを軽減する構造を志向。
特に股まわりや腰まわりの可動域を考慮したパターン設計が、ブランド創設当初から追求されていました。
この設計思想は素材や加工技術とも密接に関連し、単なるウォッシュ加工にとどまらず、レーザー・超音波・Wattwash(ワットウォッシュ)といった革新的かつ環境負荷の少ない手法を導入。
1990年代以降は縫い目のない構造や、テクノフュージョン技術を活用したデザインも登場し、機能と美の融合を体現しています。
バギージーンズの草分け的存在でもあり、Cargo Baggy(カードバギー)などゆったりしたシルエットは米国市場でも大きな評価を得ました。
また、調整可能なストラップを取り入れた日本展開モデルなど、体型やコーディネートに合わせた可変性を持つディテールも特筆すべき特徴です。
スタイルの変遷と象徴モデル:モードとストリートの交差点
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)のスタイルは、時代に応じた変化を見せながらも常に「デニムを起点に世界を構築する」視座に貫かれています。
1980〜1990年代には、ストーンウォッシュ加工や「Be Bleu Éternel」と呼ばれる色落ち防止技術などが革新的とされ、ファッションの実験場として注目されました。
縫製構造にも実験的要素が盛り込まれ、縫い目を削減する構造、レーザー加工による装飾などがモード性を強調。
90年代にはヒップホップやクラブカルチャーと結びつき、バギーシルエットを象徴するストリートの定番ブランドとしても君臨しました。
近年では、韓国のストリートファッションに影響を受けた「90年代デニムの再解釈」や「カジュアルで飾らないスタイル」が提案され、再び注目を集めています。
ロゴ入りバッグやスウェットも展開され、ストリートとミニマリズムの融合を図るアイテム群が特徴です。
現代的なリブランディングとスタイルの刷新
近年、MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)はブランド名を簡略化した「Girbaud」としてのリブランディングを開始。
単なるロゴ刷新ではなく、過去の技術や思想を現代のスタイルに接続する試みです。
新たなコレクションでは、従来のデニムに加え、スウェットやジャージー素材、インディゴフリースなど多様な素材を導入し、より快適かつ多機能なスタイル展開を行っています。
デニムブランドという枠を超えて、現代のユーティリティウェアとしての可能性を拡張している点が注目されます。
また、Y2Kリバイバルやストリートカルチャーの文脈で、かつての「バギー」や「テックデニム」といったデザインが再評価されており、新たなファン層の支持を得つつあります。
デザインとスタイルから見るブランドの体温
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)のデザイン的特徴とスタイルの歩みは、「革新」「実用性」「表現性」が一体となって発展してきた軌跡です。
立体裁断や独自加工、ゆったりしたフォルム、そして社会やカルチャーとの接点を通じて、常に服のあり方を更新し続けてきました。
現代における再構築と新たな展開も、過去の知見と信念を背景に持ちながら、「新しいスタイルの翻訳」として機能しており、ブランドの温度感を保ったまま未来へと歩み続けています。
まとめ:MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー) ブランドリリース
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)は、単なるジーンズブランドにとどまらず、「技術革新」と「美意識」を融合させた独自のデザイン哲学によって、ファッション界に大きな影響を与えてきました。
立体裁断やストーンウォッシュ加工をはじめとする多彩な加工技術、バギーシルエットの先駆けとしての挑戦、そして環境に配慮した現代的アプローチまで、そのスタイルは常に時代を先取りし、独自の存在感を放ち続けています。
近年では韓国や日本をはじめとするアジア圏で再び脚光を浴び、ストリートとモードの境界を越えるスタイルとして再評価される中で、若年層の支持も獲得しています。
過去のアーカイブを生かしつつ、新たなリブランディングを通じて現代の感性に寄り添ったプロダクトを提案し続けるその姿勢は、まさに“進化するクラシック”と呼ぶにふさわしいものです。
MARITHÉ + FRANÇOIS GIRBAUD(マリテ+フランソワ ジルボー)のデザインとスタイルを理解することは、現代ファッションを読み解くうえで非常に重要な鍵となるでしょう。
PROFILE
- メンズファッション専門WEBライター
- 古着屋「GARATOIRO」「BUYER'S GARMENT」を運営する元メンズアパレルデザイナー。
セレクトショップのECサイト運用担当後、WEBマーケティング業界に従事し、事業部長などのキャリアを経験。
起業後は30万人以上のファッションユーザーに利用されるWEBメディア「IDEALVINCI」専属ブロガーとしても活躍。「メンズ古着」「リユースファッション」などの情報も発信。
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