
夏のファッションに欠かせないアイテムのひとつとして注目されている「バハマシャツ」。
リゾート感あふれるその佇まいは、ただのカジュアルシャツとは一線を画し、南国の風を感じさせるようなリラックス感と上品さを兼ね備えています。
キューバシャツやアロハシャツとも似て非なる魅力を持ち、近年では街中でのスタイリングにも取り入れられるなど、その活躍の場は広がりを見せています。
この記事では、バハマシャツの特徴や歴史、代表的なブランド、そしてスタイリッシュな着こなし方までを詳しくご紹介します。
目次
バハマシャツとは?特徴と魅力

開放感あるデザインが魅力|バハマシャツの基本構造
バハマシャツは、主に開襟タイプの半袖シャツで、ゆったりとしたシルエットと通気性のよい素材が特徴です。
南国のリゾート地での着用を前提としているため、締め付けのないリラックスした着心地が魅力で、リネンやコットンなどの軽やかな素材が多く使用されています。
胸元や背中に施された刺繍や細かなディテールもポイントで、シンプルながらも手の込んだデザインが多く見られます。
また、ボタンの配置やポケットの数などはブランドや地域によって異なることがあり、これらのディテールにより着こなしの雰囲気も変化します。
フォーマルすぎず、かといってカジュアルに寄りすぎない、絶妙なバランス感覚がバハマシャツの魅力と言えるでしょう。
アロハシャツやキューバシャツとの違いとは?
バハマシャツはしばしば「アロハシャツ」や「キューバシャツ」と混同されがちですが、それぞれに明確な違いがあります。
アロハシャツはハワイ発祥のシャツで、派手なボタニカル柄やビーチモチーフがプリントされたデザインが主流。
カジュアルなリゾートウェアとして世界中に広まりました。
一方、キューバシャツはラテンアメリカ由来の伝統衣装で、前身頃に縦のプリーツ(アルフォルジャ)や刺繍、4つのポケットが付いているのが特徴です。
比較的フォーマルな場でも着用されることが多く、ドレッシーな印象があります。
バハマシャツはこの両者の中間的存在であり、アロハのような派手なプリントではなく、キューバシャツほど格式ばってもいない、程よく上品なリゾート感が漂うデザインが特徴です。
着るだけで南国気分に|シルエットと素材の魅力
バハマシャツの最大の魅力は、着るだけで南国の風を感じさせるような「リラックス感」にあります。
ゆとりのあるボックスシルエットは、体型を選ばず着用できる上に、動きやすさと快適性を両立。
暑い季節にもストレスなく着られる点で、日本の夏にも非常にマッチします。
素材には主にリネンやコットン、レーヨンなどの通気性に優れた天然素材が用いられ、肌触りも軽やかです。
また、汗をかいてもベタつきにくく、ナチュラルなシワ感が味となるため、着込むごとに風合いが増していくのも楽しみのひとつです。
休日のリゾートやバカンススタイルだけでなく、街中でも涼しげに見えるアイテムとして、近年はタウンユースにも取り入れられています。
バハマシャツの起源と歴史背景

カリブ海に根ざす文化|バハマシャツのルーツ
バハマシャツのルーツは、その名の通りバハマ諸島を含むカリブ海地域にあります。
特にキューバやドミニカ共和国、バハマなどの温暖な気候の国々で、伝統的な民族衣装として着られてきた「グァヤベラ(Guayabera)」と深い関係があります。
グァヤベラは、通気性に優れた素材で作られ、前面にプリーツと複数のポケットを持つシャツで、宗教行事やフォーマルな場面でも使用される格式ある服装です。
このようなラテンアメリカやカリブ海のシャツ文化が、アメリカや欧州のリゾートファッションと融合して生まれたのが「バハマシャツ」だと考えられています。
南国の空気をそのまま纏ったような開放感と、エレガントな雰囲気が共存するスタイルは、この地域特有の歴史と文化背景に根ざしています。
観光ブームが後押しした1950年代以降の広がり
1950年代以降、アメリカ経済の成長とともに観光ブームが訪れ、カリブ海や中南米地域への旅行が一般化していきました。
この時期、多くのアメリカ人がバハマやキューバ、プエルトリコといったリゾート地を訪れ、現地のファッションやライフスタイルに強く影響を受けました。
このような文脈の中で、現地で着られていたグァヤベラや類似のシャツが、アメリカ本土でも「バハマシャツ」や「アイランドシャツ」として注目を集めるようになりました。
暑い気候でも快適に過ごせる機能性と、どこか異国的なエキゾチックさが、観光客たちの心を捉えたのです。
観光産業の発展とともに、現地のシャツがリゾートウェアとしてファッションアイテム化され、バハマシャツというスタイルが確立されていきました。
セレブが愛用し、世界に広がったバハマシャツ
1960〜70年代になると、アメリカの著名なセレブリティやミュージシャンたちがこぞってバハマシャツを着用し、その影響力で一気に知名度が広がっていきました。
エルヴィス・プレスリーやフランク・シナトラといったスターたちが、映画やライブのオフショットで着用していたことが、ファッションアイテムとしての価値を高めました。
さらに、マイアミやカリフォルニアといった温暖な都市でも、タウンユースとして取り入れられ、リゾートスタイルの定番として浸透していきます。
こうした流れの中で、TOMMY BAHAMA(トミーバハマ)などのブランドが誕生し、現代のバハマシャツカルチャーを築く礎となったのです。
現在では、単なるリゾートアイテムにとどまらず、ファッション性の高いアイテムとしても評価され、世界中で愛されています。
バハマシャツと文化|どのような場面で着られてきたか

クルーズや南国リゾートの定番アイテムとしての存在感
バハマシャツは、そのルーツやデザインの特性から、クルーズや南国リゾートでの定番アイテムとして長く親しまれてきました。
特にアメリカやカナダの富裕層を中心に、バハマ諸島やカリブ海を巡るクルーズ旅行において、リゾート感を演出するための装いとして選ばれることが多くあります。
日差しの強い海辺でも涼しく過ごせる通気性と、写真映えする華やかさを併せ持つバハマシャツは、旅の装いとして機能性とファッション性を両立。
サングラスやリネンパンツと合わせれば、上質なリゾートスタイルを手軽に演出できます。
こうしたクルーズファッションの文脈で、バハマシャツは“上品なバカンスの象徴”として定着しています。
カジュアルながらも格式を感じさせるパーティーウェア
バハマシャツは、リゾートカジュアルの枠を超え、パーティーシーンやセミフォーマルな場でも活躍してきました。
特にグァヤベラに近いデザインを持つバハマシャツは、結婚式のガーデンパーティーやサマーパーティーなど、ドレスコードが緩やかな場において重宝されます。
アイロンの効いたシャツにスラックスやローファーを合わせることで、フォーマルすぎず、かつきちんと感のあるコーディネートが完成します。
また、派手すぎない刺繍や落ち着いたトーンのカラーを選ぶことで、大人の上品さを保ちながら個性を表現できるのも魅力のひとつです。
このように、バハマシャツは着用シーンを選ばず、リゾートでも街中でも、さらには特別な場でも柔軟に対応できるユニークなシャツと言えます。
サルサ・ラテン音楽とともに歩んだファッションアイテム
バハマシャツは、その文化的背景から、ラテン音楽やダンスと深い関係があります。
特にサルサ、メレンゲ、ボサノバといったジャンルの音楽シーンでは、アーティストやダンサーたちがステージ衣装としてバハマシャツを取り入れてきました。
派手すぎず、しかし舞台上で映える刺繍やシルエットは、情熱的なリズムと見事に調和。
実際に、キューバやドミニカ共和国、プエルトリコなどのラテン文化圏では、バハマシャツが音楽フェスティバルやナイトイベントの定番ファッションとしても浸透しています。
音楽と密接にリンクすることで、バハマシャツは単なる服ではなく、アイデンティティや文化の象徴としても愛され続けているのです。
バハマシャツの代表的なブランド

TOMMY BAHAMA(トミーバハマ)
TOMMY BAHAMA(トミーバハマ)は、1990年代にアメリカで誕生したラグジュアリー・リゾートウェアブランドで、バハマシャツを現代的に昇華させた代表的な存在として知られています。
“Make Life One Long Weekend(人生を週末のように楽しもう)”というブランドコンセプトのもと、リゾート地だけでなく都市部でも通用する洗練されたシャツスタイルを展開しています。
トミーバハマのシャツは、上質なリネンやシルク素材を用い、落ち着いた柄や刺繍が特徴。
アロハほどカジュアルすぎず、グァヤベラほどフォーマルすぎない絶妙なバランスが、幅広い世代の男性から支持を集めています。
価格帯は高めですが、着心地とデザイン性を兼ね備えた一着はまさに“大人のリゾートスタイル”の象徴といえるでしょう。
公式サイト:https://www.tommybahama.com/
GUAYABERA(グァヤベラ)系ブランド
バハマシャツのデザイン的ルーツといえるのが、キューバシャツとしても知られる「グァヤベラ」です。
グァヤベラは、カリブ海沿岸地域やラテンアメリカで古くから親しまれている伝統的なシャツで、フロントのプリーツや装飾的な刺繍、そして4つのポケットが特徴的です。
このグァヤベラスタイルをベースにしたブランドは、バハマシャツの源流としても注目されています。
代表的なブランドとしては、キューバ発の「Cubavera(キュバベラ)」やメキシコの「Y.A.Bera」などが挙げられ、現地では結婚式やフォーマルな式典にも用いられる格調高いシャツとしての側面もあります。
バハマシャツをより伝統的に楽しみたい人には、これらのグァヤベラ系ブランドのシャツが非常におすすめです。
COHIBAR(コヒバー)ほか
バハマシャツと密接な文化的背景を持つブランドとして注目されるのが、キューバ文化や葉巻文化とリンクする「COHIBAR(コヒバー)」などのカリブ系ブランドです。
COHIBARは、同名の高級葉巻ブランドからインスピレーションを得たアパレルブランドで、男性的で渋みのあるリゾートスタイルを提案しています。
こうしたブランドの多くは、現地の伝統を尊重しながらも、洗練された現代的なデザインを取り入れており、単なる土産品ではなく“文化を纏うファッション”として支持を集めています。
また、他にもドミニカ共和国やプエルトリコを拠点とした小規模なブランドが多く存在し、ユニークな刺繍や手仕事感のあるディテールが特徴です。
こうしたローカルブランドを発掘することも、バハマシャツの楽しみ方のひとつと言えるでしょう。
バハマシャツの選び方と着こなしのコツ

サイズ感とシルエットで差がつく|リラックスフィットが基本
バハマシャツを選ぶ際に最も重視したいのが、サイズ感とシルエットです。
基本的には「リラックスフィット」が定番であり、体に密着しないゆとりあるシルエットが、南国らしい開放感と快適さを演出してくれます。
タイトすぎると暑苦しい印象になりがちで、本来のリゾート感が損なわれてしまうため、やや大きめのサイズを選ぶのが理想的です。
肩のラインが少し落ちる程度、着丈は腰よりやや下を目安にすると、動きやすさとスタイルの両立が可能になります。
素材によっては洗濯後に縮むこともあるため、試着できる場合は着用感を確認するのがおすすめです。
印象を左右する柄選び|ボタニカル・刺繍・無地の選択肢
バハマシャツの魅力のひとつが、その豊富な柄展開です。
代表的なのは、植物モチーフやトロピカルな風景を描いた「ボタニカル柄」。
リゾートらしい華やかさを演出できる反面、柄が強すぎると子どもっぽく見えることもあるため、配色が落ち着いたものや柄のスケールが控えめなデザインを選ぶと大人っぽく着こなせます。
また、無地やワンポイント刺繍入りのシャツは、より上品な印象を与えるため、シティユースやセミフォーマルなシーンにも対応可能です。
刺繍は胸元や裾に控えめに入ったデザインが人気で、程よいアクセントとして効果的です。
TPOに応じて柄を使い分けることで、着回しの幅も広がります。
都会でもリゾート感を演出|リゾート×シティのMIXスタイル
バハマシャツはリゾート地だけでなく、都市部でもおしゃれに着こなせるアイテムです。
たとえば、ボタニカル柄のシャツをテーパードパンツと合わせてシックにまとめれば、都会的なリゾートスタイルが完成します。
インナーに白Tシャツを仕込み、前開きで羽織るスタイルも定番の着こなし方です。
また、モノトーンのバハマシャツを黒スラックスと合わせることで、リラックスしつつも洗練された雰囲気を出すことができます。
派手な柄に抵抗がある人は、まずは無地のバハマシャツから挑戦するのもおすすめです。
相性抜群のパンツ&シューズ選び
バハマシャツのリラックス感を活かすには、パンツやシューズの組み合わせが重要です。
パンツは、リネンパンツやコットン素材のチノパンなど、ナチュラルな風合いのものが好相性。
ショートパンツと合わせれば、よりリゾート色が強くなり、夏のレジャースタイルにも最適です。
シューズは、レザーサンダルやエスパドリーユ、ローファーなどが定番。
特にレザー製のローファーを合わせれば、カジュアルすぎず大人の余裕を感じさせるコーディネートに仕上がります。
また、白スニーカーを合わせて抜け感を出すのも近年人気のスタイルです。
全体のバランスを見ながら、上下で「ゆるさ」と「引き締め」のバランスを取るのが、バハマシャツを上手に着こなすコツです。
バハマシャツを取り入れたメンズコーディネート例

リラックス感と上品さを両立|大人のリゾートスタイル
バハマシャツを最も自然に活かせるのが「大人のリゾートスタイル」です。
リネン素材の白やベージュのバハマシャツに、同系色のリネンパンツやコットンパンツを合わせることで、全体にナチュラルで柔らかな印象を与えます。
足元にはレザーのスリッポンやグルカサンダルを合わせると、品のあるリゾート感を演出できます。
アクセサリーはあえて最小限にし、サングラスやパナマハットなどで夏らしい抜け感を加えるのもおすすめ。
休日の散歩やリゾートディナーにも似合う、リラックスしながらも大人の余裕を感じさせるスタイリングです。
ストリート要素をプラス|ショーツ&キャップでストリートMIX
バハマシャツは、あえてストリートアイテムと組み合わせることで、都会的でエッジの効いたスタイルにも昇華できます。
たとえば、鮮やかな柄のバハマシャツをルーズシルエットのショートパンツと合わせ、キャップやスニーカーをプラスするだけで、夏のストリートMIXスタイルが完成。
シャツの前を開けて、インナーにロゴTシャツをレイヤードすることで、程よいラフさと抜け感が出ます。
さらにアクセントとしてネックレスやバングルを足すことで、ストリートとラテンカルチャーが融合したようなユニークな印象に仕上がります。
トレンド感を意識するなら、ソックスを見せるハイソックス+スニーカーの組み合わせもおすすめです。
洗練された都会派の一着|モードカジュアルでの取り入れ方
バハマシャツは「リゾート=カジュアル」という固定観念を覆し、モード系のスタイリングにも応用が可能です。
特に注目したいのが、ブラックやグレーなどのモノトーン系バハマシャツ。
刺繍や光沢感のある生地を選ぶことで、洗練された印象に仕上がります。
ボトムスにはテーパードシルエットのスラックスやワイドパンツを合わせ、足元には革靴やボリュームのあるブーツを投入。
小物はシルバーアクセサリーやレザーバッグなど、ミニマルかつシャープなアイテムを取り入れることで、全体が引き締まります。
モードな雰囲気の中にも、バハマシャツ特有の抜け感があることで、気取りすぎない大人のファッションを演出することができます。
まとめ:開放的なデザインと上質な素材感が魅力のバハマシャツ

バハマシャツは、南国の伝統や文化を背景に持ちながらも、現代のファッションにおいて幅広いシーンで活躍する万能なアイテムです。
開放的なデザインや上質な素材感は、リゾートだけでなく都市部のコーディネートにもフィットし、着る人に洗練されたリラックス感を与えてくれます。
TOMMY BAHAMAをはじめとする代表的なブランドや、キューバの伝統衣装を継承するグァヤベラ系ブランドなど、選ぶ楽しさも豊富。
柄やシルエットを意識して取り入れることで、大人の上質な夏スタイルが完成します。
バハマシャツを通して、リゾートの風を日常に取り入れ、自分らしいスタイリングを楽しんでみてはいかがでしょうか。
PROFILE
- メンズファッション専門WEBライター
- 古着屋「GARATOIRO」「BUYER'S GARMENT」を運営する元メンズアパレルデザイナー。
セレクトショップのECサイト運用担当後、WEBマーケティング業界に従事し、事業部長などのキャリアを経験。
起業後は30万人以上のファッションユーザーに利用されるWEBメディア「IDEALVINCI」専属ブロガーとしても活躍。「メンズ古着」「リユースファッション」などの情報も発信。
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