
1988年の設立以来、日常に寄り添いながらも独自の美意識を貫いてきたZUCCa(ズッカ)。
そのデザインは、一見シンプルでありながら随所にひと工夫が凝らされ、着る人の個性や心地よさを大切にするスタイルで多くの支持を集めてきました。
素材の選定からシルエット設計、色彩やディテールのアプローチに至るまで、ZUCCa(ズッカ)は常に“日常を豊かにする服”という哲学を体現しています。
この記事では、そんなZUCCa(ズッカ)のブランドの起源や歴史、創業者・デザイナーの背景、デザインの特徴とスタイルについてご紹介します。
ZUCCa(ズッカ)の起源と歴史
1988年、小野塚秋良(Akira Onozuka)氏によって設立された日本のファッションブランド、ZUCCa(ズッカ)。
そのブランド名は、デザイナーである小野塚氏自身の名前「オノヅカ」のニックネームに由来しています。
正式名称はイタリア語で「ZUCCaの小屋」という意味を持つCABANE de ZUCCa(カバン ド ズッカ)です。
初期の歩みと世界への展開
小野塚氏は1950年生まれ。
1973年に杉野ドレスメーカー学院を卒業後、1974年に三宅デザイン事務所(イッセイ ミヤケ関連)に入社し、NTTや資生堂、西武百貨店などのユニフォームを手掛けました。
1988年のブランド設立と同時に、パリコレクションにも積極的に参加し、初期から国際的注目を集めました。
1990年には第8回毎日ファッション大賞と第34回日本ファッションエディターズクラブ賞を受賞し、ブランドとしての認知を確固たるものにしました。
多彩な活動と代表的なコラボレーション
1992年には尾崎商事との提携でスクール・ユニフォームブランドを発表し、1995年にはジュネーブ国際連合職員のユニフォームデザインも担当しました。
また1996年にはSEIKO(服部セイコー)とのコラボレーションによる腕時計「チューインガム」シリーズを発表。
親しみやすくユニークなシリコン素材のデザインで話題を呼びました。
その後も「SAFARI ZOO」「DOGGY GUM」「ASPIRIN」「BLOOD」「龍眼光」など、テーマ性のある個性的なウォッチシリーズが続々と登場し、コラボレーションの幅を広げていきました。
20周年、25周年、そして新たな展開へ
2007年にはプーマとのスペシャルコレクションを発表し、2008年にはブランド設立20周年を記念して、8を横に倒すと「永遠」を意味する時計「8(エイト)」を発表しました。
2011年春夏シーズンをもって小野塚氏がデザインを退任。
その後はデザインチームがクリエーションを継続し、2011年にはブランドの22年間をまとめたルポタージュブック『ZUCCa 1988‑2011 Celebrating 22 years』を出版し、その収益を東日本大震災への義援金として寄付しています。
2013年には設立25周年を迎え、菊地凛子が脚本・監督・主演を務めたショートフィルム『MEMORY OF AN ARTIST ~芸術家の記憶~』を発表。
さらに2014年には、スーパーマーケットをイメージしたプロジェクト「ZUCCa dayz」を始動し、日用品や食料モチーフのポップなアイテムを展開しました。
また2016年には時計20周年を記念し、1998年モデル「SAFARI ZOO」を「CLOCK‑DILE」としてリバイバル発売しています。
デザイナーの背景と受賞歴
小野塚氏はイッセイ ミヤケの下で幅広いジャンルのデザインを手掛けた後、1988年にZUCCaを立ち上げ、以降もパリコレへの参加や数々の賞を受賞。
また、1992年にはUniformブランド「HAKUÏ」の立ち上げ、国連職員ユニフォームデザイン、SEIKOとのコラボレーション、2004年にはフランスの縫製工場との共同による「ZUCCa TRAVAIL」で1er TROPHEE ELAN 2004を受賞するなど、業界から高く評価されています。
現在と未来:新たなデザイナー体制へ
直近では、2026年春夏コレクションより馬場賢吾(ばば けんご)氏が新デザイナーに就任し、ブランドは新しい創造体制にシフトしました。
馬場氏は東京とパリで学び、国内外のブランドでの経験を持ち、日本製プロダクトや地域のものづくりに精通したデザイナーです。
彼の下で機能的で普遍的な仕事着・日常着を追究し、今後のZUCCa(ズッカ)に期待が寄せられています。
ZUCCa(ズッカ)は、日本発のファッションブランドとして、1988年の設立以来、パリコレへの参加や数々の受賞、斬新なコラボレーション、コンセプトプロジェクトなどを通じて独自の世界観を築いてきました。
ブランドを支えたデザイナー・小野塚秋良の感性と功績は計り知れず、新体制へと続くその軌跡は、今後もファッションシーンで重要な位置を占め続けるでしょう。
創業者:小野塚秋良(おのづか あきら)とは
小野塚秋良氏は1950年生まれの日本を代表するファッションデザイナーであり、ファッションの第一線で活躍した人物です。
新潟県ご出身で、1973年に杉野ドレスメーカー学院を卒業し、翌1974年には三宅一生デザイン事務所に入社し、NTT・資生堂・西武百貨店などのユニフォームを手掛けるなど、幅広いデザインを経験しました。
これは彼の確かなキャリアの土台であり、後の創造性の源となりました。
1988年に独立し「ウイット(WITT)」を設立した翌年の1989年、自らのブランドとしてレディスブランド「ZUCCa(ズッカ)」を発表し、ブランド名は自身の姓「オノヅカ(Onozuka)」の愛称に由来しています。
また同年、パリに「ZUCCa ヨーロッパ S.A.」を設立し、パリコレクションへの参加も果たしました。
初期の評価と栄誉、活動の幅広さ
ZUCCa(ズッカ)は、1990年に第8回毎日ファッション大賞と第34回日本ファッションエディターズクラブ賞をダブル受賞し、その独創的で快適なデザインが高く評価されました。
さらに1992年には白洋社(現:セブンユニフォーム)との協業で、ユニフォームブランド「HAKUÏ(ハクイ)」を立ち上げるなど、ファッションと機能性を融合させた新たな分野にも挑戦しました。
また、国際連合(ジュネーブ)職員のユニフォームデザインや、フランス・ボルドーの縫製工場とのコラボによる「ZUCCa TRAVAIL」ブランドも展開し、2004年にはフランス・プレタポルテ協会より「1er TROPHEE ELAN 2004」を受賞するなど、国際的な評価も得ています。
デザイン哲学と創造的アプローチ
小野塚氏は、三宅一生氏の下で培った経験をもとに、ファッションにおける実用性と美の融合を追求しました。
その自由で柔らかな発想は、ユニフォームという枠を超えた洗練と機能性を兼ね備え、「働く服」に新たな価値観を提示しました。
例えば、「働き着」を通して見る日常の美しさ――ジャズのように、生活の匂いや音楽のような要素を服に込めるという独特の視点は、彼の創造哲学の核です。
ZUCCa(ズッカ)からの退任、その後の歩み
2011年春夏コレクションをもって、小野塚氏はZUCCa(ズッカ)のデザインワークから退任し、デザインチームへとバトンを託しました。
氏の退任は60歳を迎える時期と重なり、長年にわたりパリコレクションに携わってきたキャリアの節目でもありました。
その後もユニフォームブランド「HAKUÏ(ハクイ)」のデザイン活動を継続し、2021年には30周年コレクションを発表。
ファッションだけでなく“働く人々の日常を支える服”としての普遍的な価値を追求し続けています。
創業者としての功績と影響
ファッションという枠を超え、日常・労働・機能性を重視した「ZUCCa(ズッカ)」と「HAKUÏ(ハクイ)」を手掛けた小野塚秋良氏は、単なるデザイナーに留まらず、社会とファッションの境界を揺るがす創作者として業界に大きな足跡を残しました。
その緩やかな自由と誠実なものづくりは、多くの人々の心に響き続けています。
ZUCCa(ズッカ)のデザインの特徴とスタイル
ブランドコンセプトに映す「快適さとオーガニックな日常性」
ZUCCa(ズッカ)は設立以来、「着る人にも、見る人にも心地よく、日々に、新しいオーガニック・スパイスを加えるような“日常着”」という独自のコンセプトを掲げています。
ベーシックな中にもディテールにこだわり、快適な着心地を追求する点がその根幹にあります。
ジップディテールと素材感が創る新しいシルエット
ZUCCa(ズッカ)の代表的なアイテム「ウーリッシュサージ」シリーズでは、ウールのような見た目ながらシワになりにくくドレープ性に富んだ合繊素材が使われています。
加えて、ストレッチ性も備えており、快適さと機能性を両立した仕立てが特徴です。
ジップアクセントにより、シルエットの変化を自在に楽しめるデザインが、スタイリングにエッジの効いた表情を添えています。
カジュアルながら“ひとクセ”あるデザインで差別化
ZUCCa(ズッカ)はカジュアル色が強いながら、小さなひと工夫によって「ひとクセある」デザインを実現しており、それがファッショニスタたちの間で支持される一因となっています。
例えば、ドッキングデザインのプルオーバーや上下で異なるプリーツを用いたスカートといったアイテムが挙げられます。
さらに、高機能プリーツスカートは吸水速乾性やUVカット機能を持つポリエステル素材でつくられ、見た目だけでなく機能性にも優れています。
素材の組み合わせと色彩の奥行きで魅せるスタイリング
ドレープや素材のテクスチャーを重ねるスタイル提案もZUCCa(ズッカ)の魅力です。
軽やかなナイロンコートとプリーツニットスカート、ラメソックスなどを組み合わせたブルーのグラデーションは、素材と色の織りなす奥行きあるスタイルを演出し、視覚的にも印象深い雰囲気を生み出します。
バッグアイテムにも宿るサスティナブル精神
アクセサリーやバッグにも独自のアプローチが光ります。特に「ヨットロープバッグ」は、丈夫なヨットロープとリサイクルレザー(コンポジションレザー)を組み合わせ、環境への配慮とタフで愛らしいデザインを両立させたアイテムとして注目されています。
機能性と可愛さ、サスティナブルな視点を融合したZUCCa(ズッカ)らしさが根付いています。
ユニセックスで自由なシルエット設計
ZUCCa(ズッカ)のデザインは、性別にとらわれないユニセックス性にも特徴があります。
自分らしさを表現できる自由度の高いフォルムで、多くの人が馴染みやすいスタイルを提供しています。
シャツに潜む「シンプルなのに心地よい個性」
シャツに関しては、ZUCCa(ズッカ)はあえてシンプルなパターンを重視しながらも、素材の優しい肌触りや上質さで差別化しています。
ブロード素材のチェックシャツや無地シャツなどは、見た目は控えめながら、着るとその素材感の良さが際立つ温かみのあるデザインです。
デザイン性と着やすさのバランスが取れている点が、根強くファンに支持される理由です。
ZUCCa(ズッカ)のデザインは、コンセプトにある「心地よさ」と「日常の中に新しいスパイスを加える」精神が一貫した軸となっています。
素材選びやディテール、素材の組み合わせに工夫を重ね、機能性・快適性・デザイン性を融合。ユニセックスでありながら個性のあるスタイルを提案し、ファッションとしての楽しさと生活への寄り添いを両立させています。
今後のコレクションにも、こうしたZUCCa(ズッカ)らしさが引き継がれていくことが期待されます。
まとめ:ZUCCa(ズッカ) ブランドリリース
ZUCCa(ズッカ)のデザインは、ファッションの表面的な華やかさではなく、日常生活に根ざした快適さと創造性を軸に展開されています。
シンプルな中にも個性が光るディテール、機能性を備えた素材選び、そしてユニセックスで自由なシルエット構築など、ZUCCa(ズッカ)は“ひとクセある日常着”という独自の世界観を築き上げてきました。
今後もZUCCa(ズッカ)は、日々の暮らしに新しい視点や心地よさをもたらすブランドとして、多くの人々に支持され続けることでしょう。
PROFILE
- メンズファッション専門WEBライター
- 古着屋「GARATOIRO」「BUYER'S GARMENT」を運営する元メンズアパレルデザイナー。
セレクトショップのECサイト運用担当後、WEBマーケティング業界に従事し、事業部長などのキャリアを経験。
起業後は30万人以上のファッションユーザーに利用されるWEBメディア「IDEALVINCI」専属ブロガーとしても活躍。「メンズ古着」「リユースファッション」などの情報も発信。
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